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  • 2026.05.01
    • インプラント症例

左下6番の抜歯即時インプラントと左下7番の欠損歯のインプラントの同時埋入

▼目次

今回は、長年メンテナンスで通院されていた患者さんの症例をご紹介いたします。奥歯の欠損(歯がない状態)を放置することのリスクと、十分な検査や診断を踏まえて行うインプラント治療の重要性がよくわかるケースです。

1. 患者さんのご紹介(主訴・お悩み)

今回の患者さんは、当院に長く通ってくださっている50代の男性です。

ある日、「左下の奥歯で噛むとズキッと痛む」という主訴で急遽ご予約をいただきました。

お話を伺うと、左下の一番奥の歯(第2大臼歯)はかなり以前に失っており、そのままの状態(欠損)が続いていたとのこと。今までは手前の歯だけで大きな不自由なく食事をされていたそうですが、ついにその「残っている歯」に悲鳴が上がってしまった状態でした。

2. ご来院時の状態と診断

口腔内を拝見したところ、左下6番(奥から2番目の歯)に強い打診痛と、周囲の歯肉に炎症が認められました。

【診断の詳細】

CT検査とプロービング検査

歯科用CTで立体的な画像診断を行い、さらに「プローブ」という細い器具で歯周ポケットを測定した結果、「歯根破折(しこんはせつ)」が判明しました。

原因の分析

一番奥の7番目の歯がない期間が長く、本来2本の歯で支えるべき噛み合わせの負担が、6番目の歯1本にすべて集中していました。ご本人は違和感なく食事をされていたとのことですが、長年の過度な負荷(オーバーロード)に歯の根っこが耐えきれず、真っ二つに割れてしまったのです。

残念ながら、根が割れてしまった歯を保存することは難しく、抜歯の適応となりました。

【コラム:専門用語解説】
・歯根破折(しこんはせつ): 歯の根っこが割れたり、ヒビが入ったりすること。神経のない歯に起こりやすく、多くの場合で抜歯が必要になります。
・プロービング検査: 目盛り付きの細い器具(プローブ)で歯肉の溝の深さを測る検査。破折がある場合、特定の箇所だけ極端に深くなる特徴があります。




3. 治療計画:当院の強みと精密シミュレーション

抜歯が必要となった6番目と、以前から欠損していた7番目の計2本に対し、インプラント治療を行う計画を立てました。

【当院のインプラント治療のこだわり】

抜歯即時埋入の検討

6番目は抜歯と同時にインプラントを埋入することで、治療期間の短縮と手術回数の軽減を図ります。

デジタル印象(光学スキャン)

従来の粘土のような型取りではなく、お口の中をカメラでスキャンする「デジタル印象」を採用。

ISQ値による客観的な評価

骨とインプラントがどれだけ強固に結合したかを「感覚」ではなく「数値」で判定します。

4. 治療時:科学的根拠に基づいた手術

手術当日は、まず左下6番の抜歯を行い、慎重にインプラント体を埋入しました。

【MEGA ISQⅡによる数値管理】

当院では、インプラントの安定性を測定する先進機器「MEGA ISQⅡ」を導入しています。インプラント体に磁気共鳴を発生させ、その振動を数値化(ISQ値:1〜100)するものです。
当院の基準: 毎回計測を行い、70ポイント以上の数値を確認してから次のステップ(被せ物の工程)へ進みます。100ポイントという数字は理論上の最大値であり、実際には70〜80ポイントあれば「強固に結合している」ことを表します。この客観的な指標があることで、早すぎる荷重による失敗を防ぎ、安定した治療につながります。

【治療のステップ】

1.一次手術: インプラント体埋入。ISQ値で初期固定を確認。
2.待機期間(約2ヶ月): 骨とインプラントが一体化するのを待ちます。
3.デジタル印象: 2ヶ月後、スキャナーで型取りを行います。
4.仮歯(プロビジョナルレストレーション): 約1ヶ月間、仮歯で実際に噛んでもらい、歯肉の形や噛み合わせのバランスを微調整します。
5.最終補綴物(ジルコニア): 3ヶ月目に最終的な被せ物を装着します。

【コラム:専門用語解説】
・ISQ値(Implant Stability Quotient): インプラント安定指数。骨とのくっつき具合を数値化したもの。
・ジルコニア: 「人工ダイヤモンド」とも呼ばれるセラミック素材。強度が高く、奥歯の強い力にも耐えられ、見た目も天然歯のように美しいのが特徴です。

5. 治療後・予後

治療開始から約4ヶ月で、すべての工程が完了しました。




現在は最終的な被せ物としてジルコニアが装着されています。ジルコニアは汚れ(プラーク)が付着しにくいため、インプラント周囲炎の予防にも有利な素材です。

患者さんより「自分の歯と同じように、何の違和感もなく食事ができています。痛みがあった頃が嘘のようです」と、大変喜んでいただけました。以前は欠損していた7番目の部分もしっかり噛めるようになったことで、他の健康な歯への負担も分散され、お口全体の寿命を延ばすことにつながりました。

インプラントは入れて終わりではありません。良好な状態を維持するため、今後は3ヶ月に1回の定期メインテナンスで、インプラント周囲の状態と噛み合わせのチェックを継続してまいります。

【今回の治療データ】

治療内容: 左下インプラント治療(2本)
治療期間: 4ヶ月
費用: 913,000円(税込)
リスク・副作用:外科手術を伴うため、術後に腫れや痛み、内出血が出ることがあります。インプラントは天然歯よりも感染に弱いため、術後の徹底した口腔清掃と定期検診が不可欠です。清掃不良の場合、インプラント周囲炎により脱落するリスクがあります。強い衝撃や過度な歯ぎしりにより、被せ物が欠けたりインプラントに負担がかかる場合があります。


監修
小野圭三(小野歯科医院 院長 / 歯科医師)
広島大学歯学部卒業
日本インプラント学会会員

小野貴翔(歯科医師)
愛知学院大学歯学部歯学科卒業
インビザライン認定ドクター

小野彩(歯科医師)
大阪大学歯学部 卒業
歯科保存学会 認定医

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